ひとことで言うと
再び原発事故が起こった近い未来の福島を舞台に、社会の底で生きる人々を描いた作品。見終わったあと「これはどこまでリアルなのか」と考え込んでしまう一本でした。
どんな映画か
描かれるのは、表のニュースにはまず出てこない裏社会。主人公の周りにいるのは、超低賃金で働き、ほとんど住む場所もないような人たちです。名前も知らない者同士が同じ部屋で雑魚寝をする。その生活がリアルな手触りで映されます。
印象に残った場面(ネタバレ)
一番重かったのは、彼らが唯一開いた宴席の翌日のエピソードです。仲間の一人が自ら命を絶ち、主人公はその遺体を埋めに行くことになる。束の間のにぎやかさのすぐ後に、何の救いもなく死がやってくる。この落差に、彼らの置かれた状況が凝縮されていると感じました。
本当にこんな世界があるのか
フィクションだとわかっていても、どこまでが作り話でどこからが現実なのか、境界が曖昧になってきます。「こんな世界が本当にあるのか?」という問いが、見ている間ずっと頭から離れませんでした。登場人物たちには、未来という言葉がまったく当てはまりません。ただ今日をやり過ごしているだけ。その閉塞感こそがこの映画の核だと思います。
気になった点
それは、裏社会の描写に寄りすぎていること。原発事故後の土地で、普通に暮らす人々の姿の描写があれば、裏社会との対比がはっきりして、主人公たちの孤立がより際立ったかなと感じました。
そして、息を抜ける場面がほとんどないこと。ずっと陰鬱な展開が続く。ほっこりする場面も、あることにはありますが、ほぼないと感じてしまいました。
同じく裏社会や暴力を描く北野武監督の作品には、くすっっと笑ってしまう間の抜けた瞬間があります。その笑いがあるからこそ、暗い場面がより刺さる。この映画にはそれがなく、ひたすら不幸が続くので、途中でお腹いっぱいになってしまいました。
さらに、物語が最初から不幸の底にあることも辛かった点です。だんだん転落していくのであれば、見る側も「どこで道を誤ったのか」などを一緒に考えられます。しかし、最初から光がまったく見えません。登場人物たちがなぜこんな人生に行き着いたのか、その過去が少しでも描かれていれば、彼らをもっと身近に感じられたかなと思いました。
最後まで分からなかったこと
説明が省かれすぎていて、正直なところ理解できない場面がいくつもありました。
- 主人公がヒロインと一夜を過ごした翌朝、目覚めた彼の顔の横に流れてきた水たまりは何だったのか
- ほとんど喋らない男は何者なのか。実在の人物なのか、それとも幽霊のような存在なのか
- なぜ2人は死を選んだのか。特に達也は、何がそこまで彼を追い詰めたのか
観客に解釈をゆだねる作りなのでしょう。ただ、ここまで説明がないと、置いていかれたまま映画が終わってしまいます。見終わった人と「あれは何だったのか」を語り合いたくなる映画です。
あの水たまりが意味していたもの(私の解釈)
作中では、不法投棄に手を染めた者たちが、のちにその近くを流れる川の水を口にします。その水源のそばには、彼らが捨てたものと同じような放射性物質があった。自分のしたことが、形を変えて自分に返ってくるわけです。
そう考えると、主人公が目覚めたときに顔の横へ流れてきた水も、ただの水ではなかったのかもしれません。この土地の汚れであり、彼らの罪であり、そして静かに近づいてくる終わりの気配。説明がない分、あの一瞬の水がこの映画で一番雄弁だったように思えます。
こんな人におすすめ
- 原発事故後の社会を、ニュースとは違う角度から見たい人
- 救いのない人間ドラマに向き合える人

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